足利事件の菅谷さんの自白とは
足利事件で逮捕された菅谷さんが17年半ぶりに釈放されてテレビのニュースでその発言を聞いたとき、菅谷さんが何故当初やってもいない犯罪を犯したと自白してしまったのかと大概の人だったら疑問に思うのが当然かもしれません。事件当時テレビに流された菅谷さんの映像で、パーカーのフードをかぶって視線を落とした彼が間違いなく犯人だろうと思って何でこんないたいけな子供を殺してしまったんだろうと怒りを感じたのを覚えています。そうしていま冤罪を訴えてメディヤのインタビューを受ける彼を見ると今度は、この人はぜったに潔白だろうと感じてしまいます。私たちの映像から受け取る印象というものはこれほど不確かで、報道の仕方に大きく影響されてしまっているのでしょうか?
私は一度だけ任意で警察の取り調べを受けたことがあります。1970年代の話です。当時私は世田谷区の経堂にある小さな本屋さんで本の配達をしていました。その日は近くの中学校に本を届けてから、宿直室立ち寄って用務員のGさんにも頼まれていた本を手渡しました。Gさんはあごひげを蓄えた、がっしりとした体格で、若いころは日本共産党の非合法活動に加わって武装闘争をしていたという変わった経歴の持ち主でした。毎月たくさんの本を注文して頂くお得意様でした。彼の読書量は驚くほどで、学校の先生よりたくさん本を読んでいるのが彼の自慢の一つでした。それで私は、中学校にいくたびに宿直室に立ち寄って彼の若いころの武勇伝(?)なんか聞くのが楽しみで、その日がボーナスの支給日であることはそこでGさんから聞きました。翌日、本屋さんに世田谷署から電話がかかってきました。昨日支給されたGさんのボーナスが盗難にあったというのです。当日学校に立ち寄った業者からもすべて事情を聴取しているので手続き上のことだから任意で世田谷署に来てほしいとのことでした。書店のオーナーの許可を得て世田谷署に行くと、受付で私の名前を聞いたお巡りさんに案内されたのは、いわゆる取調室でした。よくドラマに出てくる小さな机が一つあって窓には格子がはめてあるあれです。すぐに刑事さんが入ってきました。40代前半ぐらいの男性でした。まあ掛けてくださいと言われて、窓際の席に座ると向かいに座った刑事さんから発せられた言葉は「やった事はわかってるからね。早く正直に話しなさい。これぐらいだったら微罪で済むから・・。でも嘘ついたら罪が重くなるからね。」私は怒るというより、あっけにとられてしばし言葉が出てきませんでした。すると彼は「あんた以前にも寸借詐欺やってるよね。調べさせてもらったから。」わたしは徐々に怒りがこみあげてきて、「私がGさんのお金を盗ったと疑われているんですか?」と尋ねると「やったでしょ。」「やってません。それに寸借詐欺ってなんですか。それも身に覚えがないですけど。」「早く本当のこと言えば、軽く済むからね。」「そもそも任意で事情をお話しすると聞いていたんですけど、これは取り調べですか?」「任意でしょう。あんたが自分で来たんだから。」やった、やらないの問答が20分ぐらい続いて私はとりあえず帰っていいということで、世田谷署を出てきました。帰り際に「もし本当に盗んだ犯人が見つかったら連絡してください。私が犯人ではないんですから。」と言いました。「いづれにしてもまた連絡しますから。」と含みを残した発言でした。数日後に中学校に行くとGさんがやってきて、「警察に呼び出されたんだって、悪いことしたね。この学校の生徒がやったって分かったんだ。」私は安堵して、改めてあの不愉快な取り調べ室でのやり取りを思い出しました。あの時私が自分の潔白を証明することができずに連日あのような言葉を浴びせられていたら私もおしまいにはやってもいないことを自白していたかもしれません。私のような市井の人間に自らの潔白を証明することはほぼ不可能です。ただ言えるのは私は自分が盗んでいないことを知っているし、本当に盗んだ少年も自分がやったことは知っているという事です。犯人と冤罪の容疑者は確実に分かっているということです。ちなみに世田谷署からその後何の連絡も報告も、むろん謝罪もありませんでした。
| 固定リンク


コメント
官憲の取り調べ・・・誰だって嫌ですね。
今日の日本では、小林多喜二の時代の官憲態勢のような北朝鮮の人民弾圧が顰蹙をかっていますが、人権という考え方からすれば北朝鮮同様、中国もロシアもミャンマーもイランもイスラエルもアフリカ諸国も・・・この地球上で権力が人民弾圧を行っていない地域を探すほうが難しいかもしれません。
私は、大東亜侵略戦争に負けて戦争放棄・交戦権を放棄した日本で育ち生きてきたことは幸せだったと思います。徴兵されなかった、戦争に晒されなかった・・・日本列島に生きる者どもよ、戦争に荷担するな!どのような論理を聞かされようとも、北朝鮮の挑発に乗って「戦争をしたい」とは思わないこととしたいと思います。北朝鮮体制はそれほど長くは維持されず崩壊していくだろうと思います。
官憲の取り調べ・・・かつて、小さな病院の事務局長をしていて、当該病院を廃止し有床診療所+老人保健施設を形成しようとしたことがありました。伝統ある国保病院を廃止し診療所にしようとすることにはかなり反発がありましたが、地元に医療機関を残すためには、そう進めるより仕方がないと私は思いした。今でもその判断は正しかったと思っています。それが「官憲の取り調べ」と何の関係があるのでしょうか。
有床診療所整備に関して、レントゲン(MR)機器選定をするときに便宜を図ったということで、当時の放射線技師が機器納入業者に賄賂を要求して受領していたことが表面化したのです。
私の職場に官憲がやってきました。職場の応接室での対応(事情徴収)では、職場の他の人たちが落ち着かないということで、高山検察庁の取り調べ室で事実関係を調査するとことしました。
放射線技師は懲戒免職となり、私は2カ月の減給処分を受けました。
投稿: 貘 | 2009年6月16日 (火) 22時10分
獏さんこんにちは。いろんな事があるんですね。最近、国策捜査などといわれる、検察に対する報道もありましたね。大きな力を行使できる立場にある人たちにはより大きな責任も伴うことを当事者はむろんのこと、私たちやメディヤも注視してゆかなければならないとしゃくし定規に言ってみても、そうは行かないのが毎度のことなんですね。
農場は豊作でしょうか?晴耕雨読なんて最高ですね。くれぐれもご自愛ください。
投稿: シェフ | 2009年6月17日 (水) 15時51分
昔、交通事故の被害者になったことありますが(ひどい捻挫で全治3カ月)
被害者なのに「あんたも悪いんだからね」
「示談は過失相殺されるよ!」とか
いきなり強い口調でいわれて・・・
挙句に「私が周りをよくみず自転車をこいでいたため」とか勝手に調書をかかれて
「さぁこれにサインして、拇印押して」
って感じでした。
交通事故の被害者にもこんな感じなんですから、
事件の犯人の調書を作文するのなんか当たり前だろうなと思います。
ちょっと思い出したのでコメしました。
投稿: 警察といえば | 2009年10月21日 (水) 10時52分
それは、ひどい対応でしたね。自分が交通事故の被害者なのに、そんな事を言われると事故のダメージがダブルになってしまいそうです。警察がすべて、そんなふうだとは思いませんが、権力を行使する立場の人たちには特に言動に気をつけてもらいたいものです。その後、怪我のほうは完治しましたか。そんないやな事を思い出させてしまってごめんなさい。
投稿: シェフ | 2009年10月22日 (木) 00時56分